不動産の相続登記をどこにお願いしようかと思い、インターネットで検索して探そうとすると……、どこにお願いしたらいいのか余計に分からなくなってきませんか? しかも登記費用も一体いくらなのか、よく分からない。そんな人が大半だと思います。25年近く相続登記に関与している司法書士の私が見ても分かりにくいホームページばかりですので、分からなくて普通なのです。相続登記の相場や依頼先の見極め方を伝授します。
相続登記費用の相場は7~15万円みたいな表記をよく見ます。8万円も開きがあり、参考になるようでまったく参考にならない表記ですよね。当事務所も7万~としています。相続登記の費用は、不動産の個数や固定資産税評価額、管轄法務局がいくつあるのか、相続人の数、遺産分割協議書の内容、相続人特定のための戸籍謄本等をどれだけ代行取得するのか、相続人間で意思疎通がとれているのか等々の内容次第で費用は変わってきます。一概に相場は○○円だとは言いにくいのです。
かつては「司法書士報酬基準」が定められていて上限と下限が決められていましたが、現在は費用(手数料)は自由化されています。相続登記が令和6年4月1日から義務化されて、相続登記バブルと表現されることもある状況です。相続登記バブルを狙って、登記の専門家でない利益目的の烏合の衆も加わり、相続登記費用も混沌としている時代です。
日本司法書士会連合会が平成30年の司法書士報酬について調査しています。この調査は条件を指定しての調査です(有効回答数1098)。回答者がどこまで真剣に計算して回答しているか疑問ですが、相場の指針の一つにはなろうかと思います。
条件は、①土地1筆と建物1棟、②固定資産税評価額の合計1000万円、③代理申請、④戸籍謄本等を5通取得、⑤遺産分割協議書と相続関係説明図を作成、⑥法定相続人3名で1名が単独相続となっており、ごくごく一般的な一戸建ての相続登記となっています。このデータから相続登記費用の相場を回答すると6~8万円といったところでしょうか。
相続登記費用の全国調査
対象地区 | 司法書士報酬の平均値 |
---|---|
北海道地区 | 60,983円 |
東北地区 | 60,667円 |
関東地区 | 65,800円 |
中部地区 | 63,470円 |
近畿地区 | 78,326円 |
中国地区 | 65,670円 |
四国地区 | 65,578円 |
九州地区 | 62,281円 |
長年実務をしてきた大阪の司法書士事務所の視点で解説します。例えば、近畿地区とかと広く分類していますが、近畿の中でも大阪の方が奈良や滋賀、三重等よりも、平均値は高くなります。大阪の中でも地域差があり、郊外や自然豊かな地域の司法書士事務所の方が安くなる傾向にあります。大都市の方が事務所賃料や人件費も高いので、当然に費用は高くなってしまいます。
当事務所の費用は、安かろう悪かろうの金額勝負をしていませんので、平成30年の金額体系で計算すると87,400円となります。かつての大阪司法書士会の報酬基準に則って計算していますので、言い訳に聞こえるかもしれませんが、大阪では高くもなく安くもなく、付加価値を考慮に入れていただければ良心的な価格と自負しています。
何でも理由があるものです。安いには安いなりの理由があり、高いには高いなりの理由があるものです。スタッフを雇用しているそれなりの司法書士事務所が、お客さまから相続関係や相続財産、誰が何を相続するのか、その相続の背景をお聞きして、相続税の申告が必要なケースでは税理士の紹介等を含めて適切なアドバイスをするのであれば、格安で対応するのは難しいことでしょう。
相続登記をするだけで適切なアドバイスを省略するとか、アドバイスするだけの知識も経験もなく価格だけしか優位性がない、権利証書を紛失等しないように表紙等をつけてお届けすべきなのを省略している、仕事がないので格安でも仕事を得たい等の何らかの安いなりの理由があります。中には慈善事業的に適切な利益なしで司法書士業務をしている事務所もあるかもしれませんが、きっとそんな事務所はHPや広告を使用して集客はしないと思います。
反対に高いにも理由があります。ネットでのスポンサー広告をしているような事務所は、広告宣伝費もかかりますので、当然高くなります。相続関連であれば、キーワードにもよりますが、1クリック1000円以上かかることもあります。ポチっとしたらチャリンと広告宣伝費がかかるのですから、相続登記費用も高くなって当たり前です。また、拝金主義の不動産会社と組んでいる司法書士事務所だと、相続登記の紹介料で5万円とか10万円を不動産会社に支払っていることもあります。その金額はお客さまの相続登記費用にのせられていますので、当然に相続登記費用は高くなります。相続登記は30万円~みたいにただ単に高い事務所もあるのでご注意ください。
登記の専門家でない窓口経由で相続登記を手配してもらったり、単に相続登記をするだけの司法書士事務所で手続きをしたりすることで、適切なヒアリングや提案をしてもらえずに様々な不利益を被る恐れがあります。目先の金額に捉われずに、下記のようなことにならないよう依頼先はしっかり自分で見極めましょう。
・誰が相続の名義人になって売却するのかを考えずに進めて、譲渡所得税を20.315%または39.63%も払わされた。
・相続した後に少しの期間賃貸したために相続した空家の譲渡所得3000万円控除が使えなくなってしまった。
・遺産分割協議書の記載の仕方が悪く、相続不動産の売却代金の分配で贈与税を支払わせられた。
・相続の結果、自分だけ保険料や市府民税が前年よりたくさん払わされることになった。
・評価額100万円以下の土地の登録免許税の免税措置を受けられなかった。
・税理士と司法書士の連携が悪く、払わなくてもいい相続税を払わされた。
・意思統一ができていない中、一方的に手続きを進められてしまい、相続人間で紛糾してしまった。
・換価分割なんて言葉を聞いたことがないし、民法の条文にないから、そんな遺産分割協議書は作れないと言われた。
・相続手続きについての案内文が思慮を欠き、他の相続人を怒らせてしまった。
・相続手続き全般をお願いしたのに、相続税の申告に間に合わなかった。
・何に時間がかかっているか説明もなく、1年以上も時間がかかってしまった。
「相続登記」「相続登記費用」「相続登記申請書」「相続相談」等でネット検索すると、相続登記の専門家でない相続登記バブルの波に乗り遅れまいとするHP、スポンサー広告が上位に出てきます。一体どこに頼んだらよいか分からなくなってしまいますよね。相続登記の専門家として個人的な見解で一刀両断します。
⑴ネット上での書類作成代行サービス
インターネット上で、住所氏名等を入力すれば、相続登記等の申請書類が自動で作成できるサービスがあります。司法書士や弁護士ではない事業者等(無資格者)が、登記申請書類を作成したり、登記手続の相談に応じることは、法律で禁じられています。司法書士以外が書類作成代行サービスを運営しているのであれば、グレーまたは違法なサービスになります。申請が却下されても何の責任も取らないし、返金もしませんと契約書上なっていたりしますので、お気を付けください。
破格に安い価格設定もあれば、かなり高い価格設定で司法書士に頼んだ方が安全で費用も安いケースもあります。何とか相続登記が完了したとしても、権利証書(登記識別情報通知)についての説明不足だったり、表紙等をつけたりしていないため、紛失につながり結局高くつくケースもあります。
当然クレームも出ており、日本司法書士会連合会や各都道府県の司法書士会では、無資格者によるネット上での書類作成代行サービスによる被害を未然に防ぐことを目的として、無資格者の提供するサービスに関する情報を収集しています(「悪質なネット登記サービス」に関する情報提供フォーム)。また、国会(インターネット上における代行登記書類の自動作成サービスに関する質問主意書)でも取り上げられたりしています。いずれ違法との判断がくだされてもおかしくないですし、スポンサー広告等も規制されるかもしれません。
⑵一括見積りサイト
運営会社にもよりますが、「相続登記」で検索して見積り依頼先をみると、司法書士事務所も出てきますが、登記の専門家でない行政書士事務所や税理士事務所、弁護士事務所も出てきたりしますので、玉石混交といった感じです。月額3万円とかの広告掲載料がかかったり、見積り依頼が掲載会社に行くと費用が発生するシステムが多いです。費用は登録免許税の計算もありますし、見積りの精度には疑問があると個人的には思います。どこまで信頼してよいのかは疑問です。
⑶行政書士事務所
相続登記の申請代行や申請書作成代行で集客しているのであれば、違法行為になります。相続登記の申請は提携の司法書士事務所が対応しますとなっているのであれば、最初から司法書士事務所に依頼するのが正解だと思います。相続手続き丸ごとサポートみたいな形式で10万円くらいかかり、さらに提携司法書士事務所で相続登記費用7万とかかかり、費用がダブルパンチで高くなってしまうパターンが多いでしょう。
相続人調査や戸籍謄本取得を司法書士事務所より低価格での対応を売りにしている事務所もありますが、令和6年3月1日からはどこの市区町村でも簡単に戸籍謄本の取得が可能になりましたので、低価格のメリットもなくなってしまいました(戸籍の証明書の請求が便利になります)。
⑷税理士事務所
行政書士事務所と一緒で、相続登記の申請代行や申請書作成代行で集客しているのであれば、違法行為になります。あくまでも税金の専門家になりますので、相続に関していえば、相続税の心配がある場合は税理士に相談することになります。相続登記が発生する場合、税理士と司法書士がワンセットになって対応します。司法書士を紹介できません、税理士を紹介できません、というような事務所は避けた方が賢明だと思います。
⑸弁護士事務所
有象無象の一つに入れたら怒られてしまいます。有象無象ではなく、弁護士は何でも代理できますので、相続登記も代理(代行)することができます。しかし、大半の弁護士は登記を専門にはしませんので、相続登記を代理していません。提携している司法書士に依頼するのが普通で、相続登記を積極的に集客している弁護士を私は見たことがありません。遺産分割で揉めたりしていて、遺産分割調停や審判を申し立てる予定であれば、弁護士事務所に依頼しましょう。多少紛糾はしていても、司法書士が間に入り双方の意向を整理して遺産分割協議書を作成することで、丸く収まることがあります。弁護士に着手金20~30万円払うことなく相続人がお互いに譲歩して円満に解決したいなら、司法書士が適任かと思います。当事務所はそのような案件を得意としていますので、お気軽にお声がけください。
⑹売却不動産情報収集目的の不動産会社
相続不動産を売却したい人の情報を集めたいだけの相続登記の情報提供サイトもたくさんあります。スポンサー広告している会社もあるので、相続登記の依頼ができるかと思いクリックしてしまう人が多いでしょう。基本は単なる相続登記についての情報提供で、司法書士も紹介できますといったスタンスです。
気を付けないといけないのは、前述のように拝金主義の不動産会社と組んでいる司法書士事務所を紹介されたときです。不動産会社への相続登記の紹介料(バックマージン)5万円とか10万円を上乗せされていて、非常に費用が高いことがありますので、ご注意ください。
⑺葬儀社による相続パック
葬儀社が相続登記や相続全般について解説している情報サイトは、相続パックのような形で丸ごとお任せというサービスが多いです。葬儀社が窓口になっていますので、相続に関して知識が欠けていることも多く、何を聞いてもパックですからすべてお任せくださいで、あまり信用できないので辞めましたという依頼者を何人も見てきました。
相続登記に関していえば、当然に申請代行できませんので、司法書士費用が別途かかります。税理士費用も別途になります。費用がかかっても構わないので、時間節約もあり葬儀ついでに相続全般の窓口を任せたいというのであれば、メリットがあるのかもしれません。
⑴最安価格29,800円~の罠
ニッ・キュッ・パ~、安っ!と思って飛びついてみたら、費用詳細を見ると遺産分割協議書作成費用、相続関係説明図作成費用、戸籍謄本取得費用、登記事項証明書取得費用、申請代行費用等が別途で、合計すると結局は高い金額設定になっているパターンも多いので気つけましょう。間違ってはいなくて、「~」なんですよね。
中には相続登記19,800円という驚きの司法書士事務所もあります。詳細を見ると19,800円「~」となっていて、細々と費用がかかる記載がありますが、司法書士の代理申請でありながら、本当に非常に安い司法書士事務所もあります。事務所経営する者としては、そんな金額体系で食っていけるの?って思ってしまいます。当事務所も忙しいときは外注しようかなぁって、冗談です。
⑵売却前提で相続登記を無料代行や0円表記
不動産会社が広告で、「相続登記を無料代行」を謳っていたらアウト、司法書士法違反です。組んでいる司法書士もアウトです。相続した不動産を売却するなら、相続登記費用を負担しますみたいな不動産会社の広告をたまに見ます。相続登記費用0円と表記し、相続不動産の情報を集める目的で、不動産会社が相続登記を広告宣伝で集めているのであれば、司法書士法違反だと考えます。
相続登記費用0円で集客した不動産を不動産会社が買い取る場合、不動産会社が負担した相続登記費用も考慮に入れて買取価格を算定するだろうし、相続登記代が無料で本当にトクするのかは怪しい気がします。まぁ、その不動産会社と組んでいる司法書士事務所は二束三文に値切られて相続登記をしているのだろうことは想像に難くないですね。
⑶今なら●%オフ、キャンペーン価格
平成29年にアディーレ法律事務所が、常時着手金を全額返還するキャンペーンを行っていたのに、事務所のウェブサイト上では1カ月間の期間限定と謳っていたことにより業務停止2カ月の懲戒処分を受けています。年中、「今なら●%オフ」「キャンペーン価格」という表現をしているのであれば怪しいですよね。アディーレと同じ匂いがします。オフ価格・キャンペーン価格という言葉に惑わされずに費用体系を吟味しましょう。
正解は司法書士事務所一択です。というか、相続登記の専門家は司法書士で、何でも代理できる弁護士を除けば、他の士業は代理・代行申請はできません。令和6年4月の相続登記義務化による相続登記バブルにのっかろうとネット上での書類作成代行サービス等がありますが、登記できなかったり不安定だったりしますので、避けた方が賢明でしょう。
不動産の名義だけ変更できればよく、相続人間で争いもないし、相続税も関係ないし、譲渡所得税や税務上の問題もなければ、費用が安い司法書士の一点突破でもよいかもしれません。経験豊富で知識もあり、質の高いサービスを提供している事務所が格安の報酬設定していることは、まず考えられません。それなりのアドバイスやサービスを求めるのであれば、価格だけで選択することは避けた方がよいでしょう。何でもそうですが、価格にはそれなりの理由があります。
できれば近隣の司法書士事務所で、その事務所のホームページ等を見て、電話や面談でその事務所の方針や司法書士の考え方、雰囲気等を把握して納得したうえで選んでもらいたいと思います。
6万~15万みたいな費用を聞いても仕方ないと思いますので、相続登記の内容を伝えて簡易な見積り価格を事前に確認することをおススメします。電話に出たスタッフ等が新人だったりするとモゴモゴするかもしれませんが、それなりの事務所にちゃんと条件を伝えれば、概算見積りは即答してくれるでしょう。即答できないのであれば、所詮その程度の事務所ということです。下記内容を伝えてください。
①不動産の所在地
②不動産の個数
③不動産の固定資産税評価額(登録免許税を計算するのに必要になります。固定資産の評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書をお手元に準備しておいてください。)
④相続人の人数
⑤戸籍謄本収集の状況
ここまで読んでくれた人はどれくらいいるのでしょうか? 長々と書きすぎましたが、裏話も含めて他のホームページでは書いていない業界のタブーも赤裸々に記載してしまいました。
当事務所は、決して安くもなければ高くもない適正な費用設定をしているつもりです。相続人が48人いるような難解な相続案件を遺産分割協議作成でまとめあげたり、他の事務所で断られた相続案件をスムーズに処理したり、特急案件を得意にしている事務所です。低価格だけで勝負はしない、信頼と実績の司法書士事務所だと自負しています。皆さまの期待に応えられる仕事をしますので、お気軽にお問い合わせください。
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