ひとくちに相続登記といっても、「相続登記っていくらかかるの?」「何が必要?」「父が亡くなったが、不動産の名義は祖父のまま…」「前妻(夫)との子がいる」「そもそも相続登記って何?」など、大半の方にとっては、わからないことがほとんどだと思います。ここでは、あおぞら事務所でもお問い合わせの多い疑問点について、Q&A形式でお答えします。
相続登記とは、亡くなった人(被相続人)から引き継いだ不動産(土地・建物)の登記簿の名義を相続人に変更する手続きのことをいいます。相続人のうち一人だけが所有者になることも、数人が共同で所有者になることもできます。
相続手続きの流れ
法律で定められた、被相続人の財産を相続できる権利をもつ人を法定相続人といいます。
被相続人に夫または妻がいれば、必ず相続人になります。内縁関係の場合は相続人になりません。子どもも必ず相続人になりますが、養子縁組をしていない再婚相手の連れ子の場合は相続人になりません。生前に両親が離婚していても子どもは相続人になります。その他、夫・妻・子どもがいない場合や亡くなっている場合は、両親や兄弟姉妹、おいやめいが相続人となることもあります。
被相続人に夫または妻や子、兄弟姉妹がおらず、親や祖父母も亡くなっているなどで法定相続人が一人もいない場合は、利害関係を有している人が相続財産清算人の選任申立てをすることができます。清算人による調査や分配後に残った財産は、最終的に国庫に帰属することになります。
相続人不存在・相続財産清算人選任申立て
法定相続人全員で被相続人の財産や債務の分け方について話し合いをします。その話し合いを遺産分割協議といい、協議の内容を書面に記したものを遺産分割協議書といいます。協議は裁判上で行われる必要はなく、相続人全員による協議でもかまいません。
いったん成立した遺産分割協議のやり直しは、一定の条件のもとでは可能ですが、すでに相続した不動産を売却してしまっている場合は取戻しができないことや、新たに贈与税や所得税が発生する可能性があることなどに注意が必要です。このため、慎重な協議を行うことが大切です。
遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
登記されている所有者が亡くなっても、不動産の名義は自動的に変更されないため、法務局への登記申請が必要になります。相続人が自分で申請することも可能です。業として代理して申請することができるのは、司法書士か弁護士のみと法律で定められています。
また、令和6年4月1日から、相続登記が義務化され、正当な理由なく相続登記をしなかった場合は、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。相続関係が複雑・遺産分割協議がまとまらないなど、すぐに相続登記を申請できない場合は、相続人申告登記という簡易な制度を利用することもできます。
相続手続きの相談はお気軽に!
相続登記(不動産の相続による名義変更)
相続登記にかかる費用は、①登録免許税(登記申請時に払う税金)②必要な書類(戸籍謄本など)の取得費用③司法書士・弁護士に払う報酬(依頼した場合)の3つに分けられます。
①登録免許税
不動産の固定資産税評価額によって決まります。誰が申請しても同じ金額です。平均的な一戸建て住宅でだいたい3~8万円くらいです。
②必要な書類の取得費用
戸籍謄本などの実費と、代行取得報酬(司法書士・弁護士に依頼した場合)の合計です。令和5年から戸籍広域取得制度がスタートし、被相続人と一定の関係がある人は、全国どこでも、自宅や会社の最寄りの市役所等で簡単に戸籍の取得ができるようになりました。この制度を利用することで、代行取得にかかる費用を節約することができます。(この制度では郵送請求はできないことに注意が必要です。)実費は戸籍謄本一通450円、除籍・改製原戸籍謄本一通750円です。
③司法書士・弁護士に支払う報酬
ここが一番気になるところですが、依頼する事務所によって大きく異なります。
相続人が自分で申請する場合、法務局による無料相談制度があります。しかし平日に何度か法務局に足を運ぶ必要があり、費用は節約できますが、けっこうな手間と時間がかかります。
法務局に申請してから登記の完了までは、だいたい平均2週間から1か月くらいです。
相続登記(不動産の相続による名義変更)
相続登記費用の相場-どこに頼むのが正解?
たとえば、土地の登記名義人となっている祖父の相続登記をしないまま、父(相続人)が亡くなった場合、祖父から父名義にする相続登記では登録免許税がかかりません。(相続により土地を取得した個人が相続登記を受ける前に死亡した場合の免税措置・租税特別措置法84条の2の3第1項)また、固定資産税評価額が100万円以下の土地の場合も、相続登記の登録免許税がかかりません。(少額の土地を相続により取得した場合の免税措置・租税特別措置法84条の2の3第2項)
相続が発生してから何年も放置していた場合、相続人が大勢になり複雑な相続関係になってしまっていることも少なくありません。あおぞら事務所は、そのような難解な遺産分割手続も得意としておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
相続登記の登録免許税の免税措置
単に「すべての財産を兄が取得する」と記載された遺産分割協議書に署名押印することは、相続放棄とは異なります。被相続人のプラスの資産だけでなく、借金などのマイナスの資産も含めて一切を引き継がず放棄することが相続放棄です。相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要です。
安易に考えて相続放棄をするのではなく、誰がどの資産を引き継ぎ、どの債務を負担するのか、相続人全員でよく話し合う必要があります。
遺産放棄・財産放棄による相続手続き
相続放棄手続きの流れ・費用・注意点
前妻との子も法定相続人となるため、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。これまで面識もなく、どこに住んでいるのか調べても判明しない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任をしてもらうことで、相続手続きを進めることができます。ご自身で連絡を取りづらい場合は、手紙等によるアプローチもいたしますので、まずはご相談いただければと思います。
行方不明者・不在者財産管理人選任申立て
自宅の金庫などから手書きの遺言書が発見された場合、家庭裁判所に提出して、検認という手続きを請求しなければなりません。封印されている遺言書を勝手に開封したり、裁判所に提出しなければ、5万円以下の過料に処せられることもあります。検認手続きには、書類を揃えたり、申立書を作成したりといった手間と時間がかかります。
現在、遺言書を書くことをお考えの場合は、自作の遺言書でなく公証役場で作成する公正証書遺言や、遺言書を法務局で保管する自筆証書遺言保管制度などを利用することで、遺言書の検認の必要がなくなり、残された家族の手間をなくすことができます。さらに紛失や隠匿のおそれもなくなり、安心して遺言書をのこせます。これからは、元気なうちに遺言書を書いておくことが常識になっていくかもしれません。
自筆証書遺言の検認申立手続き
遺言を書くのに必要な最低限の知識
公正証書遺言の作成
自筆証書遺言保管制度って、どうなの?
令和5年4月より、相続または遺贈(遺言書によって財産を相続すること)で土地の所有者となった個人が、その土地を手放し、国庫に帰属させることができる相続土地国庫帰属制度という制度が始まっています。手放せる土地には条件があり、費用や期間もかかりますが、価値のない土地だと放置する前に、考えてみてもよいかもしれません。
建物に関しては、亡くなった人が住んでいた家(実家など)であれば、売却した際の税金の特別控除の制度もあります。亡くなった人が老人ホーム等に入居していた場合や、家屋の解体費も適用対象となりますので、空き家の処分に迷ったら、売却を考えてもよいでしょう。
認知症や障害をお持ちで判断能力が不十分な方と遺産分割協議を行うには、後見人(成年後見人)の選任や、家族信託という方法があります。(もちろん遺言書があれば、分割協議は不要のためこのような手続きを経ることなく相続手続きを進めることができます。)
家族信託は、後見制度や遺言書だけでは対応しきれなかったことに対応できる新しい制度です。もし、ご自身の相続人にご高齢の方や障害をお持ちの方がいらっしゃる場合、ぜひ考えていただきたい財産管理の方法です。(重度の認知症の場合、家族信託は利用できない可能性があります。)
成年後見申立
家族信託で高齢者や障害を持つ家族を守る
被相続人が外国人の場合、通常の相続登記とは異なる対応が必要になります。例えば在日韓国人の方の場合、戸籍謄本の代わりに登録事項別証明書という書類を韓国から取り寄せ、日本語に翻訳する必要があります。インターネット上に代行サイトが多数ありますが、対応にかなりの時間がかかったり、高額の手数料を取られるおそれもあります。あおぞら事務所では、これまでに多数の韓国相続や外国人の方の登記案件を取り扱っており、優良な代行業者のご紹介も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
不動産や現金以外にも、会社の株式や証券会社の証券なども相続の対象となります。これらの相続に関しては、各会社ごとにそれぞれ調査や手続きが必要で、手間や時間がかかります。たとえば、銀行の解約手続きでは各銀行ごとに必要な書類が異なります。相続手続の経験が豊富なあおぞら事務所では、書類の記入方法などのアドバイスも可能です。また、相続登記の申請と同時に法定相続情報一覧図を取得すれば、何度も分厚い戸籍謄本の束を用意する必要がなくなります。
相続税の申告がある場合は、当事務所と提携している税理士とともにお客さまの相続手続をトータルでサポートいたします。
遺産承継業務(遺言執行・相続財産管理業務)
相続登記を業として代理して申請することができるのは、司法書士か弁護士だけです。ではどちらに依頼するのが良いか?両方のメリット・デメリットを簡単にお伝えします。
司法書士に依頼するメリットとしては、①費用が安い ②登記のスペシャリストである ③相続した不動産の処分や管理についての相談ができるという点があげられます。反対に、裁判上での争いになった場合、介入できないというデメリットがあります。
弁護士に依頼するメリットとしては、①相続人どうしで争いになっている場合、裁判上で解決することができる②相続人どうし仲が悪い場合は、代理人となって交渉してくれるという点があります。デメリットは、①費用が高い ②登記に関しては専門性が低い ③結局、相続登記は提携している司法書士事務所に依頼され、手数料を取られる可能性がある ④不動産に関しては知識が少なく、相談できないという点があります。
このように、やはり費用の点と登記について詳しいという点が司法書士に依頼する大きなメリットかと思います。所在不明な相続人がいる・相続人どうしの仲が悪いなど、相続そのものが揉めている場合は弁護士に依頼する、相続人どうしの仲が良く、誰がどのように相続するか、相続した財産をどのようにするかなど、全員で協議がきちんとまとまっていて、あとは相続登記を申請するだけというような場合は司法書士に依頼する、というように状況にあわせて選択することで不要な費用を抑えることができます。