2018年7月に、相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と、法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立し、2019年1月13日から段階的に実施されています。
⑴遺産分割前の預貯金払戻が可能に
今までは遺産分割が終了するまでの間、相続人単独では預貯金債権の払戻しができませんでした。令和元年7月1日付の改正で、各相続人は、遺産分割が終わる前でも、一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができるようになりました。(令和元年7月1日施行)
①家庭裁判所の判断を経ずに払戻し
遺産に属する預貯金債権のうち、一定額については、単独での払戻しを認めるようになりました。
・相続開始時の預貯金債権残高(金融機関ごと)×3分の1×当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分=単独で払戻しができる額(上限150万円)
②保全処分の要件緩和
仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました(家事事件手続法の改正)。
⑵自筆証書遺言の方式が緩和
改正前は全文を自書する必要があり、不動産や金融資産を特定するのに手間がかかりました。改正により、自筆証書遺言は、財産目録をパソコン等で作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付したりして作成することができるようになりました。ただし、財産目録にはすべてのページに署名押印が必要となります。(平成31年1月13日施行)
⑶遺留分減殺請求が金銭債権化
遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭請求のみをすることができるように改正されました。改正前のように不動産等が共有にはなりません。遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができます。(令和元年7月1日施行)
⑷特別の寄与の制度創設
相続人以外の被相続人の親族が、無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。(令和元年7月1日施行)
<事例>
・亡き長男(2021年死亡)の妻が、被相続人である義父(2022年死亡)の介護をしており、相続人は別居の長女と次男の場合。
【現行制度】
相続人である長女と次男は、被相続人の介護をまったくしていなかったとしても相続財産を取得することができ、他方で介護をしてきた長男の妻は、相続人ではないため分配にあずかることはできません。
【改正後】
遺産分割の複雑化を避けるため、遺産分割は従来通り長女と次男の相続人間だけで行うこととしつつ、長男の妻には相続人に対して別途金銭の請求ができるようになります。これにより、相続人以外の者による介護等への貢献に報いることができ、相続人との間での実質的公平が図れるようになりました。
⑸相続の効力等に関する見直し
相続による権利の承継は、遺産分割や遺言によるかにかかわらず、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないこととなりました。例えば、単独でAさんが相続する旨の公正証書遺言があったとしても、相続登記をしないうちに他の相続人の債権者に法定相続分で登記申請され差押えられたりすると泣き寝入りせざるをえなくなりました。遺産分割協議書や遺言があることで安心して相続登記をしていない人がいますが、早期に相続登記を済ませることをお勧めいたします。(令和元年7月1日施行)
⑹配偶者居住権の創設
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者は、遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身または一定期間、その建物に無償で居住することができるようになります。被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできます。なお、居住建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。(令和2年4月1日施行)
<事例>
・相続人が妻及び子、遺産が自宅(2000万円)及び預貯金(2000万円)だった場合。妻と子の相続分= 1:1 になり、妻2000万円 子2000万円となります。
【現行制度】
妻が自宅に住み続ける形で遺産分割協議をすると、妻 自宅2000万円、子 預貯金2000万円となり、預貯金一切受け取れることができず、今後の生活に困ってしまいます。
【改正後】
遺産の自宅は「配偶者居住権」と「負担付所有権」に分離させることにより、配偶者は自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになります。
・妻→配偶者居住権1000万円+預貯金1000万円=合計2000万円
・子→負担付所有権1000万円+預貯金1000万円=合計2000万円
配偶者居住権の価値評価は複雑な計算となりますので、司法書士や税理士等の専門家にご相談ください。
⑺配偶者短期居住権の創設
配偶者は、相続開始時に被相続人の建物(居住建物)に無償で住んでいた場合には、以下の期間、居住建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を取得する。
①配偶者が居住建物の遺産分割に関与するときは、居住建物の帰属が確定する日までの間(ただし、最低6カ月間は保障)
②居住建物が第三者に遺贈された場合や、配偶者が相続放棄をした場合には居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6カ月
(令和2年4月1日施行)
⑻法務局での自筆証書遺言の保管制度
自筆証書遺言を作成した場合、法務大臣の指定する法務局(遺言書保管所)に自ら出向いて、遺言書保管官の本人確認や方式の適合性の外形的確認を受けたうえで遺言書の保管を申請することができるようになります。遺言書保管所に保管されている遺言書は、家庭裁判所の検認手続きが不要になります。相続人や受遺者らは、遺言者の死亡後、遺言書保管所において、遺言書保管の有無の調査や遺言書の写しの交付を請求することができ、また遺言書を閲覧することもできます。これにより、要件を欠いて遺言が無効になったり、変造や偽造のおそれもなくなり、自筆証書遺言のデメリットが解消されて遺言者の意思が、より迅速に実現できるようになります。遺言をお考えの方は、お気軽にご相談ください。(令和2年7月10日施行)
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