高齢者の認知症や障害を持つ子供の対策として利用されているのが家族信託です。後見制度や遺言だけでは対応しきれないことを信託の制度を活用して、認知症の高齢者や障害を持つ子供を守ることができる仕組みです。日本では、家族信託は比較的新しい制度のため、法的解釈が確立していない部分がありますが、今までの制度では実現できなかったことも安心して実現できますので、ご検討ください。
家族信託は、民事信託の中の1つの手法を指します。簡単に説明すると、財産の管理を誰に任せるかで呼び名が変わると思ってください。信託法等では家族信託や民事信託という用語はなく、実務上や一般的に使うときの便宜の呼び名で厳格に定義はされていません。
信託業法の改正で、誰にでも信託をして財産管理をお願いできるようになりました。財産管理を任せる人を受託者と言います。非営利目的で財産を受託者に任せること全般を民事信託と呼び、家族に財産管理を任せる場合を家族信託と呼びます。信託銀行や信託会社が受託者として財産を任せる場合は、営利目的となり商事信託と呼びます。
信託とは、財産を持っている人（委託者）が、取り決めした目的（信託目的）にしたがって、所有する金銭や土地などの財産を、自分自身や大切な人（受益者）のために、信頼する人または専門家（受託者）に託し、運用・管理を任せる法的な枠組みです。
家族信託で簡単に説明すると、親が持っている収益物件（マンション等）を家族信託で子供名義にして、子供がその収益物件を管理・運用して、そこから生み出される利益を親のために使うみたいな感じです。子供は親の利益のために、その収益物件の賃貸契約や修繕も当然できるし、買い替えたり、現金化して金融商品で運用もできたりもします。
家族信託でもっとも注目されていて、活用されているのが高齢者の認知症対策です。厚生労働省の研究班が２０２４年５月８日に公表した結果によると、６５歳以上の高齢者の認知症の有病率は１２．３％、軽度認知障害の有病率は１５．５％です。日本では、認知症は約４４３万人、軽度認知障害約５５８万人もいる時代です。
認知症になり、意思能力がなくなってしまうと、預貯金の管理や引出し、不動産の売却等の法律行為、相続税対策ができなくなってしまいます。資産が凍結されてしまい、成年後見人を裁判所で選任してもらわないと法律行為ができなくなってしまうのです。この状況を回避するために活用されているのが家族信託です。
障がいを持つ子供のための家族信託
障がいを持つ子供の親が健康で元気であれば問題ありませんが、親が認知症になったり、死亡したときのことを考えると、残された子供のために家族信託で決めておいてあげることで不確定要素を少なくできます。呼び方としては福祉型信託と言われたりもします。
任意後見契約をしていなければ、親が認知症等になると親の財産は凍結されてしまい、後見人が選任されるまでの間、障がいのある子供の生活面等に問題が生じてしまいます。後見人もどんな人が選ばれるかは裁判官次第です。遺言を残していても、障がいを持つ子供の未成年後見人を選任してもう必要が出てきます。
こんなときに障がいない子供や、他に子供がいないのであれば自分の兄弟姉妹等に家族信託をして、認知症等になった後のことや亡くなった後のことを決めておくことができます。
司法書士や弁護士等が後見人が選任されると、毎月２～６万円の費用が発生します。１年間に２４〜７２万円、１０年間だと２４０〜７２０万円かかります。家族信託は依頼先により費用は違いますが、当事務所の場合、家族信託契約書作成費用は財産額の１％で、別途不動産であれば信託登記費用が発生します。
例えば７０００万円の財産がある人であれば、後見の場合は毎月の費用は約６万円で年間７２万円です。家族信託契約書費用は最初のみで、１％であれば７０万円です。ケースバイケースですが、家族信託の方が費用が抑えられ、しかも柔軟な対応ができる可能性が高いことでしょう。
家族信託、自分の財産の活用方法に対して、より自分の希望を反映させることができます。成年後見制度よりも負担や制約が少なく、遺言による遺贈よりも細かい条件を設定することができます。自分の老後や死後のことを考えて、受益者（自分自身や家族）のために財産管理方法を今から考えてみてはいかがでしょうか。当事務所は、皆さまのご要望に沿ったより良い財産管理方法をご提案させていただきます。不動産を活用した信託登記についてもお任せください。
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