不動産を売買する場合、不動産会社が司法書士を手配することが大半です。不動産会社から提示された登記費用の見積りが、適正なのか、それとも不当に高いのかを一般の人が判断するのは非常に困難です。インターネットで調べても、戸建てかマンションか、住宅ローンの有無、減税が効くのか否か等で変わってくるため、非常に分かりにくいのです。分かりにくいことをいいことに、不当に高い登記費用を請求されることがありますので気をつけましょう。
登記費用は、登録免許税や印紙税等の誰が申請しても一律にかかる税金(立替金)と司法書士に支払う報酬(手数料)とで大きく2つに分かれます。かつては「司法書士報酬基準」が定められていて報酬の上限と下限が決められていましたが、現在は自由化されています。中には一律〇万円としている事務所もありますが、登記申請件数、売買対象不動産の個数や評価額、住宅ローンの抵当権設定の有無等の個別の状況によって費用が変動する事務所が大半です。一概に相場は○○円だとは言いにくいのですが、それでも当然相場はあります。明らかに不当に高い登記費用の司法書士事務所も多々あります。
不動産を売買するときの売主費用の考え方は、関西圏と関東圏で違います。関西圏では、売渡費用は売主が負担することが通常です。関東方式では、住所変更登記や担保権抹消登記費用を除く売渡費用と言われるものは、一般的に買主負担となります
当事務所では、買主費用(現金購入)は6万円~、買主費用(住宅ローン有)は10万円~、売主費用(売却のみ)2万3,000円~、売主費用(抹消変更有)3万3,000円~(いずれも登録免許税等の実費は別途)としております。
不動産も売主買主も関西か関東なら問題ありませんが、関西の不動産を関東の人が売却する場合等のときは、仲介会社がどう取り仕切るかで変わってきたりします。個人的には、不動産の所在地で判断するのが公平かと考えます。
基本的に登記を委任する司法書士を自分で選ぶことができます。そのため、買主・売主がともに違う司法書士に依頼する場合は、買主と売主でそれぞれ別の司法書士が登記を担当することもあります。一人の司法書士が買主・売主の双方を担当するときと比較して、買主は基本的に費用が変わることはありませんが、売主は追加で登記簿謄本の閲覧費用や出向費を請求される場合があります。当事務所でも売主のみ担当する場合は、費用が5,000円~加算されます。
住宅ローンを利用する人は抵当権設定登記もする必要があります。金融機関によっては、抵当権設定登記する場合は必ず金融機関指定の司法書士を使う旨を契約に盛り込んでいることがあります。その場合、売買による名義変更を担当する司法書士と抵当権設定を担当する司法書士が別々になることがあります。抵当権設定登記を担当する司法書士は、金銭消費貸借契約や決済に立ち会うため、1人の司法書士に登記をお願いするときと比べると、別途出向費や立会費用がかかり、費用が高くなることが多いのです。
⑴不当に高い報酬は、バックマージンの可能性大!
不動産会社または個別の営業担当と司法書士が結託して、明らかに不当に高い見積りになっていることがあります。典型的なパターンは、土地と建物の売買のときは通常1件で登記申請ができるのに、土地と建物で申請を2件に分けて別申請したり、土地と建物と一緒に道路持分も申請できるのに道路持分を別申請して、費用を二重請求するケースです。また、申請回収費用や調査費用として、数万円単位が計上されている項目がある場合も、手間に対する対価として見合っているのかも分からず、不透明と言わざるを得ません。
これらの上乗せされた費用は、そのまま司法書士の懐に入ることもありますが、見積りを依頼した不動産会社にバックマージンとして支払われている可能性が大なのです。売買契約等で、不動産会社の指定する司法書士が担当することが定められている場合は、バックマージンを前提とした不当に高い見積りになっていることもありますので、用心していただければと思います。
当事務所では業界適正化のための企画として「不動産登記見積り診断(不動産登記費用セカンドオピニオン)」を行っており、かつての報酬基準で計算している当事務所の費用と比べて不当に高くないかを診断しています。当事務所に実際に診断依頼があった見積りの中で、バックマージンが疑わしいモデルケースを以下に掲載いたします。
①一戸建てで申請や費用を分けるケース
土地と建物の売買のときに、買主や売主が同じ人であれば、通常1件で登記申請をします。1件で申請できるにもかかわらず、土地と建物で申請を2件に分けたり、土地と建物で費用を2項目に分けたりして、費用を二重請求しているケースです。しかも、報酬額も相場に比べて高い金額設定になっています。また、郵送で申請回収している事務所が大半な時代にもかかわらず、申請回収費用も3万円と高い金額設定になっています。ちなみに当事務所が見積り診断した結果は、226,049円でした。比較すると10万円以上の差があります。さて、その10万円は、誰のポケットに入るのでしょうか?
種別 | 司法書士報酬 | 登録免許税・印紙税 |
---|---|---|
所有権移転(土地) | 45,000円 | 69,800円 |
所有権移転(建物) | 45,000円 | 上記に合算 |
抵当権設定(1780万円) | 45,000円 | 17,800円 |
謄本取得 | 4,000円 | 3,248円 |
申請回収費用 | 30,000円 | |
立会・調査費用 | 35,000円 | |
住宅用家屋証明書 | 10,000円 | 1,300円 |
御値引き | -2,680円 | |
小計 | 211,320円 | 92,148円 |
消費税(10%) | 21,132円 | |
通信・交通費 | 5,400円 | |
小計 | 5,400円 | |
登記費用の合計 | 330,000円 |
②マンションで費用を分けるケース
マンション等の敷地権化された区分建物を売買するときは、専有部分と敷地利用権は分離して売買できないので、必ず申請を1件でします。にもかかわらず、建物と敷地権をまるで別申請したかのように2項目に分けて、二重請求しているケースです。報酬額についても見たことがないくらい高い金額設定です。ちなみに当事務所の見積り診断結果は、当時で258,540円でした。比較すると14万円以上の差があります。個人的には懲戒請求してもいいくらいな事案だと考えます。
種別 | 司法書士報酬 | 登録免許税・印紙税 |
---|---|---|
所有権移転(建物) | 75,000円 | 88,700円 |
所有権移転(敷地権) | 75,000円 | 上記に合算 |
抵当権設定(2000万円) | 75,000円 | 20,000円 |
登記事項証明書 | 2,000円 | 1,624円 |
立会調査費用 | 35,000円 | |
住宅用家屋証明書 | 10,000円 | 1,300円 |
御値引き | -14,167円 | |
小計 | 257,833円 | 111,624円 |
消費税(10%) | 25,783円 | |
交通費・通信・郵送料 | 4,760円 | |
小計 | 4,760円 | |
登記費用の合計 | 400,000円 |
③単純に高いケース
令和6年12月に見積り診断をした、中古住宅を購入したケースです。相場を考慮しても非常に高い価格設定と言えます。ちなみに当事務所が見積りした結果は、268,800円となりました。比較すると13万円以上の差があります。
種別 | 司法書士報酬 | 登録免許税・印紙税 |
---|---|---|
所有権移転(売買) | 80,000円 | 105,100円 |
抵当権設定(2170万円) | 80,000円 | 21,700円 |
住宅用家屋証明書 | 20,000円 | 1,300円 |
調査、立会、交通費、申請業務 | 70,000円 | 3,000円 |
小計 | 250,000円 | 131,100円 |
消費税(10%) | 25,000円 | |
登記費用の合計 | 406,100円 |
⑵こういう費用の計上の仕方は誤り
不当な計上とまでは言いませんが、よく交通費・通信費・郵送料等の計上を誤っている見積りを見かけることがあります。所得税法上、司法書士に調査費・日当・旅費等として支払うものは、源泉徴収や消費税の対象となる報酬や費用に原則含まれるべきものです。
源泉徴収や消費税の対象から除くことができる交通費等の実費は、報酬や料金の支払者(お客さま)自身が、通常必要な範囲で、交通費や宿泊費等を交通機関や宿泊先等へ直接支払った場合とされています。司法書士が先に立て替えて、後から依頼者に請求することが一般的でしょう。交通費・通信費・郵送料等を立替金(預り金)として適当に見積りに計上するのは間違いなのです。司法書士でも分かってない人が多いのではないでしょうか。
⑶売主でもぼったくりはある?
一般的に登記費用が高額になるのは、売主より買主です。不当な計上をされやすいのは買主ですが、売主でも不当な計上をされていることがあります。以前に実際にあったケースで、不動産売買の決済時に売主側の司法書士が提示した請求書がチラッと見えたのですが、住所変更登記と売渡費用のみで19万4,200円という非常に高い請求額でした。同様の仕事内容でも、当事務所の見積りの場合は計4万円ほどです。特殊な案件でもなかったのですが、どのように計上すればこのような費用になるのか見当もつきません。
⑷司法書士は報酬表の明示義務アリ
司法書士法法施行規則第22条に「司法書士は、あらかじめ、依頼をしようとする者に対し、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならない。」ということが定められています。司法書士は、報酬の金額または算定方法を事務所の見やすい場所に掲示する等して明らかにし、依頼を受けるにあたって報酬について説明をしなければならないのです。見積りに一貫性がなく、人によって報酬が違うなんてことは違法なのです。それでもバックマージンを要求してくる不動産会社から「10万円上乗せして、10万円キックバックして」と言われて、言われるがままに見積りしているような事務所が実際に存在しているのです。
当事務所のホームページにも、料金表や登記費用のサンプルを掲載しています。やはり掲載しているほうが、お客さまにとっても参考になると思います。中にはホームページに料金案内が一切掲載されていない司法書士事務所もあります。掲載されていないからといって、バックマージンをやっている事務所と断定してはいけませんが、不都合なことがあったりするのでは・・・と勘繰ってしまいます。
⑴関西あおぞらの場合
長年実務をしてきた大阪の司法書士事務所の視点で解説します。例えば、関西の中でも大阪のほうが奈良や滋賀、三重等よりも、平均値は高くなります。大阪の中でも地域差があり、郊外や自然豊かな地域の司法書士事務所のほうが安くなる傾向にあります。大都市のほうが事務所賃料や人件費も高いので、当然に費用は高くなってしまいます。
当事務所の費用は、安かろう悪かろうの金額勝負をしていません。前述していますが、上記⑴①のモデルケースの条件で計算すると225,709円となります。下記に見積りの明細を掲載いたします。かつての大阪司法書士会の報酬基準に則って計算していますので、言い訳に聞こえるかもしれませんが、大阪では高くもなく安くもなく、付加価値を考慮に入れていただければ良心的な価格と自負しています。
種別 | 司法書士報酬 | 登録免許税・印紙税 |
---|---|---|
所有権移転(土地・建物) | 28,650円 | 69,800円 |
抵当権設定(1780万円) | 39,700円 | 17,800円 |
立会費用 | 20,000円 | |
住宅用家屋証明書 | 12,000円 | 1,300円 |
登記事項証明書・インターネット閲覧 | 6,000円 | 3,324円 |
日当・交通費・通信費等 | 15,000円 | |
小計 | 121,350円 | 92,224円 |
登記費用の合計 | 225,709円(消費税込) |
⑵高いな・・・と思ったら、まずは行動を!
司法書士報酬は自由化されたので、高い登記費用であっても費用について説明を受けた上でお客さまが納得して支払う場合は、まったく問題がありません。登記費用が不当に高く、かつ登記費用について一切説明がないのであれば、高い費用を全額支払う義務はないと思います。まずは、当然のことですが自分が納得いくまで説明を求めて、その司法書士または間に入っている不動産会社等と話し合いをしてみてください。
不当に高い費用を請求し、説明もせず話し合いにも応じないような司法書士の場合、司法書士会にクレーム窓口を設けている都道府県もありますので、相談をしてみてもよいかもしれませんね。過去に支払った手数料であっても、何とかなる可能性は0ではないと個人的には思います。
提示された見積りに疑問を持った人は、別の司法書士に見積りをお願いしてみることもお勧めいたします。原則司法書士は不動産の取引決済に立ち会う必要があるので、司法書士を変更することも視野に入れて、近隣に事務所を構えている司法書士に見積りをお願いしてみるのがよいでしょう。
⑶不動産登記見積り診断(不動産登記費用セカンドオピニオン)
当事務所では業界適正化のための企画として「不動産登記見積り診断(不動産登記費用セカンドオピニオン)」を行っております。提示された見積りが適正か否か診断いたします。何だか高いな・・・と思ったら、見積りを取り寄せてメールまたはFAXしていただくだけです。かつての報酬基準で計算している当事務所の費用体系でお見積りをいたします。
不当に高い見積りを提示してきた司法書士や不動産会社に見積り診断の結果を伝えても、減額に応じてくれないかもしれません。そんな見積りをしてくる司法書士にそもそも任せたくないと思う人もいるかと思います。相手方や不動産会社が司法書士を指定する特約が売買契約書等にある場合でも、お客さまの選択権を奪い、納得できない司法書士費用を強制させることは、消費者契約法10条の「消費者の利益を一方的に害するもの」に該当して無効になる可能性も高いと思います。
大阪や奈良といった関西圏の人は、知り合いの司法書士がいるからと当事務所に変更をお願いしてみていただければと思います。お待ちしております。
当事務所は、決して安くもなければ高くもない適正な費用設定をしているつもりです。
購入される住宅が旧耐震基準(昭和56年以前築)の建物の場合、居住用でも通常は登録免許税・不動産取得税の減税や住宅ローン控除の適用が効かなくなります。しかし、「耐震基準適合証明書」等の新耐震基準に適合していることを証明する書類を取得できれば、登録免許税・不動産取得税の減税や住宅ローン控除の適用があります。司法書士事務所がそこまで手配することは少ないと思いますが、当事務所では原則「耐震基準適合証明書」の取得が可能か否かの調査もしています。
低価格だけで勝負はしない、信頼と実績の司法書士事務所だと自負しています。適正な価格にて皆さまの期待に応えられる仕事をしますので、お気軽にお問い合わせください。